接触角とは?
接触角とは何か?
水滴をテーブル表面に落としたときに丸い滴になるのを見たことがあると思います。場合によっては落とした水がベタッと広がってしまうこともあると思います。これらの現象は液体の固体表面への濡れやすさによって決定され、落とした液体と固体表面の表面張力、およびその固体・液体間の界面張力の値によって表されます。落とした液滴と固体表面とで形成される角度を「接触角」と呼び、Youngの式として知られる公式が成り立ちます。接触角は固体表面と液体の種類からおおよそ同じ値を得ることができることから、現在では固体表面の状態を知るための良い指標として、様々な分野の研究、生産管理の現場で測定されています。
接触角はどうやって測るのか?
接触角は実際の固体と液体のサンプルを使用し、液滴を作成して測定します。固体表面上に作られた液滴は実際にある角度を形成して存在しています。一般的な測 定方法として、液滴に光を当て、その反対側からカメラで液滴の画像を捉え、画像解析で接触角を計算するという方法があります。世界トップシェアを誇るKRÜSS社の接触角計は様々 なラインナップがありますが、この構造が基本部分にあります。カメラで捉えられた画像をソフトウェアにて解析し、接触角を計算します。接触角の計算方法はいくつか種類があり、状況に応じて使い分けることが必要です。昔は幅高さ法(θ/2法)が一般的でしたが、現在ではYoung-Lapace法や楕円法がよく使用されています(詳細後述)。
静的 or 動的?
固体サンプル上に落とされた液滴はすぐさま一定の角度を形成して落ち着くわけではありません。サンプルによっては徐々に濡れ広がっていくものもあり ますし、短時間で濡れ広がるようなサンプルでも、非常に短い時間での挙動を見るのであれば時間による角度の変化がないことはありません。
接触角を使ってサンプルの評価をするのであれば、この点を注意しなければなりません。着液してからの時間がまちまちな状態で測定を行っても正しい比較ができなくなってしまいます。
上記とは別に、意図して液滴に変化を与えることで動的な接触角を測定するという方法もあり、拡張・収縮法や滑落法などが知られています。
拡張・収縮法
固体サンプルの動的な濡れ広がり性を評価する方法として、固体サンプル上の液滴の体積を増加あるいは減少させて、界面を前進・後退させながら、経時的に接触角を測定する方法です。固体サンプル上の液滴との接点が拡張(前進接触角)、あるいは縮小(後退接触角)し始めたときからの接触角を測定します。
撥液性の評価や固体表面の均質性の評価に利用されています。また、前進接触角と後退接触角の差は接触角ヒステリシスと呼ばれ、この値が小さいほど固体表面の均質性が高くなるという知見があります。
測定可能な装置はこちら:DSA25 >> 、DSA30 >>
滑落法(転落法)
液滴を着液させた固体サンプルを傾け、液滴の滑り出す角度(転落角)や滑るときの液滴自身の接触角(前進角・後退角)を評価する方法です。
拡張・収縮法と同じく動的な前進角と後退角を測定することができ、それに加えて、転落角からは付着性を評価することが可能です。
測定可能な装置はこちら:DSA25 >> 、DSA30 >>
接触角の各種計算方法
液滴法ではカメラで捉えた液滴の形状を楕円カーブなどにフィッティングさせて接触角を算出しますが、その計算式にはいくつもの種類があります。
例えば、ガラス基板の接触角を求めるJIS規格R 3257では液滴の幅と高さから接触角を算出する幅高さ法(θ/2法)が採用されています。しかし、幅高さ法はその簡便さを理由に接触角測定の黎明期に生み出されたものであり、非対称形状の液滴や高接触角を示すサンプルでは正しい評価ができません。
ソフトウェアによる画像解析技術が進歩した現在では、より正確な測定ができるヤングラプラス法や楕円法が一般的となってきています。接触角の大小や、静的接触角か動的接触角かなど、状況に応じて適切な計算方法を選択することが正しい評価を行うためには非常に重要です。
以下は接触角計の世界的リーディングカンパニーであるKRUSS社推奨の範囲表です。
計算方法名 | 近似方法 | 接触角推奨範囲 | 動的接触角測定 | 非対称の液滴測定 |
ヤングラプラス法 (Young-Laplace) |
重力影響下での円 | 20-180° | 不可 | 不可 |
楕円法 (Ellipse(Tangent-1), Conic Section) |
楕円 | 10-120° | 可 | 可 (非対称性大は不可) |
接線法 (Tangent, Polynomial) |
多項定理近似 | 10-180° | 可 | 可 |
真円法 (Circle) |
円 | 0-20° | 不可 | 不可 |
幅高さ法 (Height/Width, θ/2法) |
円 | 0-20° | 不可 | 不可 |
計算方法に関する技術レポートはこちら:Measuring with method – but with which one?
色々なサンプルの接触角
上記で解説した方法であれば平らな固体サンプルの接触角は容易に測定することができますが、特殊な形状のサンプルはどうでしょう。例えば製薬の世界では薬の溶けやすさを評価する必要性がありますが、粉薬の濡れ性はどのように評価すれば良いのでしょうか。
そのようなアプリケーションには表面張力計が使用されます。「表面張力計で接触角を測定する」というと違和感があるかもしれませんが、表面張力を測 定するのにも固体を使うという点では表裏一体で、表面張力が既知の液体を使って測定すれば接触角が分かるのです。表面張力計で接触角を測定する場合、 Wilhelmy法やWashburn法などの理論が使われます。
Wilhelmy法(ウィルヘルミー法)
プレートやファイバなどのサンプルの動的接触角を測定する方法です。測定中、固体サンプルを液中に沈めるまたは引き抜くようにサンプルステージを上下に移動させ、高さ位置ごとの濡れ荷重を測定して動的接触角を算出します。サンプルを沈める際が前進角、引き抜く際が後退角を示します。
測定可能な装置はこちら:粉体・繊維接触角計K100
Washburn法(ウォッシュバーン法)(浸透速度法)
チューブに粉体を詰めておき、チューブ下端から液体が粉体間を濡れ上がる際の時間と濡れ荷重を測定して接触角を算出する方法です。事前に接触角=0°となる液体(ヘキサンやメタノールなど)でキャピラリ定数を算出し、その後に接触角が未知の液体を使用して測定します。
測定可能な装置はこちら:粉体・繊維接触角計K100
特殊環境での接触角
濡れ性の評価の対象となるサンプルが多種多様であるのと同時にまた、特殊な環境、例えば高温・高圧下での接触角測定を行いたい場合や窒素ガス雰囲気での測定を行いたい場合もあるのではないでしょうか。
KRÜSSの接触角計のラインナップではそれらユーザー様の難しいアプリケーションにも対応できるように複数のモデルと多岐に渡るアクセサリをご用意しています。