ASTM D7171 燃料中の水素含有量の測定
ASTM D7171-05 規格によるTD-NMRを用いた燃料中の水素含有量を測定する試験方法は、既存の試験方法であったASTM D3701-01 および D4808-01に比べて測定が高速かつ正確であり、最良の代替試験方法として置き換わりました。
1.概要
水素含有量 (HC:Hydrogen Content) は、航空燃料の最も重要な品質パラメーターです。このパラメーターはこれら燃料系の製品の多くの技術的特性と相関があります。燃料における燃焼の本質的な特性は、主に水素含有量に関連しており、水素含有量が最適でない場合、カーボンエポシットの形成、排気ガスや煙の増加、発熱量の増加につながり、燃焼室の破壊を引き起こす可能性があります。
時間領域核磁気共鳴 (TD-NMR) による検量線を用いた校正を伴う測定で、この水素含有量(HC 値)を正確かつ簡便に計測することが可能です。
TD-NMR法による水素含有量(HC 値)の測定の利点は以下の通りです。
・非常にシンプルで迅速なサンプル前処理
・高い精度と再現性
・頻繁な校正が不要
・非破壊分析で繰り返し測定可能
・短い測定時間
2.原理
サンプル中のプロトンを90°パルスによって励起させた後、FID (自由誘導減衰) 信号を記録します。FIDはデバイスの検知器によって受信される電気信号です。これは、水素原子核中の陽子の磁気モーメントの緩和プロセス、つまり高周波励起後のスピン系の平衡状態への復帰を伴います。
FIDシグナルの強度(振幅)は、サンプル中のプロトンの数に正比例します。したがって、TD-NMR装置は、水素含有量が既知の基準物質に対して線形に校正できます。
3.測定と校正
校正の手順として、水素の質量分率が既知であるサンプルを用意し、NMR信号の強度(振幅)を測定します。ここで、水素質量分率とNMR信号の強度(振幅)の線形関係性を確認し検量線を作成します。表1に記載の物質のように水素含有量が既知の2つ以上のサンプルを用意し校正することが望ましいです。
以下に、酢酸フェニルエチル、酢酸シクロヘキシル、ドデカンを使用して作成した検量線を示します。
サンプル調製は、ディスペンサーを使ってNMRチューブに一定量入れ、その質量を測定するだけの簡単な作業になります。サンプルを入れたNMRチューブは、装置のマグネット温度と等しい温度を維持する恒温槽に先に入れ、温度が平衡状態となるまで静置しておきます。その後、NMRチューブを装置にセットし、測定を行うと、測定したNMRシグナル強度と校正した検量線から、水素含有量(HC値)が1分以内に算出されます。
これは標準精度0.01%で自動的に表示され、電子ジャーナルに測定記録が追加されます。
4.結論
TD-NMRではFIDシグナルの強度(振幅)とプロトンの数に正比例の関係性があることを用いて、基準物質で
検量線を作成し、燃料中の水素含有量を定量測定・評価することが可能です。