学ぶ・知る

接触角計とは?

接触角計とは、ぬれ性の指標である接触角を計測するための装置で、表面科学や材料研究において必要不可欠な測定装置です。このページでは、接触角計の基本的な原理と装置の構造、接触角計のアプリケーション例、接触角計の様々な測定原理と種類について、詳しく説明します。

接触角計の測定原理と装置構造

測定の目的やサンプルの形状に応じて様々な測定原理がありますが、最も一般的なのは液滴法(Sessile Drop Method)です。液滴法の接触角計では、ステージ上に置いた固体表面に一粒の液滴を乗せ、その形状を横方向からのカメラで解析することで接触角を算出します。測定原理はシンプルながら、接触角計の動作には多くの要素が関わっており、光学系、光源、液滴作成、着液、サンプルステージ移動、データ解析ソフトウェアなどが組み合わさっています。これらが測定にどのように影響するのかを理解し、適切に装置を操作することが測定の正確性と信頼性を向上させるポイントです。

接触角計のアプリケーション

ぬれ性を評価できる接触角計ですが、ぬれという現象はガラスをぬらす雨粒などの日常生活のほか、工業洗浄後に行うコーティングなど製造業の現場でも見られます。接触角は固体自体のぬれやすさに加え、液体自体のぬれやすさや固体と液体のぬれの相性によっても影響を受けます。そのため、ガラスや金属といった固体に限らず、インクや化粧品といった液体など、接触角の評価は非常に幅広い分野で行われています。

代表的なアプリケーション例

  • 表面処理技術の開発:材料表面の処理やコーティングの効果を評価し、製品の品質向上に貢献します。
  • 化粧品の品質管理:化粧水やシャンプーのぬれ性を測定して、化粧品の品質を確保します。
  • バイオテクノロジー研究:細胞培養プレートの表面性質を評価し、細胞の成長環境を最適化します。
  • インクや塗料の配布特性評価:印刷やコーティングプロセスにおいて、インクや塗料の挙動を分析します。
  • 工業製品の表面設計:製品の表面性質を調整し、機能性や耐久性を向上させます。

接触角計のアプリケーション例一覧

接触角計の種類

  • デスクトップ型接触角計(液滴法)
    高い精度と多機能性を備え、幅広い測定条件に対応します。これらの装置は研究室や製品開発の環境で広く利用されています。デスクトップ型接触角計は、静的および動的な接触角測定が可能であり、液体の吸着や浸透などの現象を詳細に解析できます。
  • ハンディ型接触角計(液滴法)
    コンパクトで携帯性が高く、簡便な測定に適しています。これらの装置は製造現場やフィールドでの使用に適しており、素早い測定を可能にします。ハンディ型接触角計は、表面のぬれ性を素早く評価するのに便利ですが、高度で詳細な解析が必要な場合にはデスクトップ型が必要になる場合があります。

液滴法の接触角計

液滴法による接触角の測定は、固体の上に乗せた液滴の形状をカメラで解析するというシンプルな原理です。しかし、接触角計には必要な機能に応じてラインアップが存在しており、測定の目的に応じて適切なモデルを選択して使用することが重要です。

◇KRUSS社製接触角計(液滴法)の一覧

DSA25 DSA30/100 MSA MSA Flex Ayriis
タイプ デスクトップ デスクトップ ハンディ ハンディ ハンディ
(PC不要)
測定動作 着駅動作のみ手動 全自動 全自動 全自動 全自動
動的接触角
(拡張収縮法/転落法)
対応 対応
表年自由エネルギー 対応 対応 対応 対応
表面張力 対応 対応 対応 対応
サンプルステージ
水平移動
手動 手動/自動
温調 対応 対応

動的接触角やサンプルステージ移動による多点測定、温調など、拡張性の高さがデスクトップタイプの特徴です。一方、機能は限られていますが、コンパクトなのでどこにでも持ち運んで手軽に測定を行えるのがハンディタイプの特徴です。

測定精度について、一般的に、仕様上の数値は倍率や解像度に優れたカメラを搭載するデスクトップタイプの方が高いですが、しっかりとした作りのハンディタイプのカメラも十分な性能を備えていることから、装置タイプによる測定誤差はほとんどありません。
実際の測定においては、装置タイプ由来の誤差よりも、サンプル表面のぬれ性に起因する誤差の方がはるかに大きいケースが大半を占めています。

液滴法以外の様々な接触角計

液滴法は平面や凸面の基材の接触角を測定できますが、測定原理上凹面の測定はできず、また、液滴を乗せることが難しいカーボンファイバのような径の小さな単繊維や、敷き詰め方によって結果が変わってしまう粉体の接触角の測定には適していません。このように液滴法を用いることができないサンプルであっても、別の測定原理を用いることで接触角を測定することが可能です。凹面ならトップビュー法、単繊維ならウィルヘルミー法、粉体ならウォッシュバーン法といった具合に、サンプルに適した測定原理を用いることで、接触角を正確に算出することが可能になります。

◇接触角の測定原理比較とKRUSS社製の代表的な装置

測定原理 測定方式 特徴 サンプル形状 装置例
液滴法 液滴形状の画像解析 最も一般的 平面/凸面の一般的なサンプル DSA25/DSA30
/MSA/MSA Flex
3D接触角法 液滴表面における光の反射パターン解析 人為誤差の完全排除 平面/凸面の一般的なサンプル Ayriis
トップビュー法 液滴表面における光の反射距離解析 凹面対応 凹面サンプル TVA100
ウィルヘルミー法 ぬれ荷重解析 ファイバー対応 単繊維/円柱状サンプル Tensiio
ウォッシュバーン ぬれ荷重解析 粉体対応 粉体/繊維束サンプル Tensiio

接触角計は接触角の測定はもちろん、表面自由エネルギー表面張力を測定することもできます。また、表面張力計であっても、同様に接触角や表面自由エネルギーを測定することができます。ただし、どの装置、どの測定原理であっても同じ結果が得られるというわけではなく、評価の目的やサンプルの形状などに応じて最適な機種を選択する必要があります。

接触角計ラインアップ

ハンディ3D接触角計 Ayriis(アイリス)

Ayriis(アイリス)はKRUSS社が開発した新技術「3D接触角」による測定に対応しています。従来の液滴法では、液滴の形状を横方向のカメラで解析していましたが、Ayriisは測定フード内に90個のLED光源が液滴を覆うように配置されており、液滴表面で反射されるこれら光のパターンを2台のカメラで解析することによって接触角を算出します。液滴法は固液界面のベースラインを読み取る必要があり、場合によってはそこで機器由来または使用者由来の誤差が発生するリスクがありましたが、3D接触角ならベースラインを読み取る必要がないため、例えば初めて装置を触る人でも熟練者と同じ測定精度を保つことができます。
ハンディ3D接触角計 Ayriisの画像

ダブル滴定ハンディ接触角計・表面自由エネルギー解析装置 MSA

MSAは2種類の試薬の接触角を同時に滴定・測定可能なダブル滴定システムを備える革新的なハンディ接触角計です。これにより、これまで試薬の入れ替えや計算などで手間のかかっていた表面自由エネルギーの測定を、誰でもワンクリックのわずか1秒で行うことが可能です。また、誰もがワンクリックするだけの全自動で簡単・スピーディな測定が可能。高撥水表面であっても少ない液量のまま容易に着液(例えば0.5μlや2.0μlなど)が可能。従来ニードル式で問題となる着液時のニードル高さ位置による接触角値への影響を低減。固体ニードル不使用なのでサンプルを傷つける心配がないという特徴をそなえます。
ダブル滴定ハンディ接触角計・表面自由エネルギー解析装置 MSAの画像

ハンディ接触角計 MSA Flex

MSA Flexは接触角測定機能をハンディタイプに落とし込んだシンプルでコンパクトな装置です。サンプル溶液や試薬などお好みの液体をカートリッジにセットして、接触角や表面自由エネルギーを測定することができます。液滴の作成、着液、データ取得はワンクリックの全自動で行われます。また、捜査はUSBケーブル接続されたPCから行いますが、専用ソフトウェアADVANCEは快適な測定を強力にサポートします。
ハンディ接触角計 MSA Flexの画像

簡易接触角計 DSA25

シンプルなハードウェアで高機能接触角測定を実現する簡易接触角計です。人間工学に基づく操作性抜群の日本語対応ソフトウェア「ADVANCE」との組み合わせにより、手動機ながら思いのままの接触角測定が可能です。着液動作が手動ながら、再現性良く着液可能な独自機構「ドーズ&プッシュ着液システム」を採用した、高い人気を誇る接触角計です。自動液滴作成、手動着液、自動測定による測定システムは使い勝手が良く、一部手動ながらスピーディー・快適・高精度な解析が可能です。
簡易接触角計DSA25の画像

高機能自動接触角計 DSA30

KRUSSのハイエンド全自動モデルDSA100の機能はそのままに、コンパクト化、低価格化を果たしたモデルです。液滴の作成、着液、測定をすべて自動で行うため、人為誤差を最大限に排除した測定をご希望の場合に最適です。マルチシリンジシステムを使用すれば最大4種類の試薬を自動で切り替えながら測定できます。自動軸移動オプションの選択により、XY(θ)軸を自動移動させながら固体上の任意の個所の接触角をワンクリックの全自動で測定することができます。マッピング解析にも対応しており、固体上の濡れ性の分布を可視化することも可能です。

高機能自動接触角計DSA30の画像

ハイエンド自動接触角計 DSA100

接触角計の世界的リーディングカンパニーであるKRUSS社のラインアップの中で、最もハイエンドなモデルです。簡易接触角計DSA25やコンパクトな全自動接触角計DSA30が対応するほぼすべての機能とオプション、A4サイズを上回るような大判サンプルの測定、高圧環境での測定など、ありとあらゆるニーズに応えられる拡張性の高さを備えます。カメラ倍率は無段階7倍ズームと小さな液滴でも常に最適な倍率で高精度に測定することができます。滴定や着液などの各種動作の手動化・自動化はもちろん、最大8種類の試薬切り替えが可能なマルチシリンジ、最大測定可能サンプルサイズW700 x D∞ x H275mmを誇るモデルDSA100Lなど、特殊なサンプルを測定できる各種オプションやモデルを取り揃えています。
ハイエンド自動接触角計DSA100の画像

簡易自動接触角計・転落角モデル DSA25T

リーズナブルながら高機能なDSA25シリーズに転落角測定用チルトベースを加えたモデルです。環境チャンバを取り付けたままの転落角測定も可能です。DSA25は固体表面への着滴動作にワンタッチの「ドーズ&プッシュ着液システム」を採用した半手動型接触角計です。着適後に自動で測定を開始するようプログラムを組むことによって、全自動測定モデルにも劣らない高精度解析が可能です。

簡易自動接触角計・転落角モデルDSA25Tの画像

マイクロ滴定自動接触角計 DSA30M/DSA100M

KRUSSのマイクロ滴定接触角計DSA100M/30Mはピコリットルオーダーの液滴を滴下し、微小領域の濡れ挙動の評価が可能なモデルです。専用のピエゾ滴定装置を使用してピコリットル単位の液滴を作成し、対物レンズ付き高倍率カメラで捉えた微小液滴の測定を行います。微小液滴は非常に速く蒸発するため、高速度カメラが必要な場合もあります。また高精度に測定位置の制御を行う場合は高精度位置制御システムを組み合わせると便利です。また、滴定装置の追加で通常の接触角計としても使用できます。

マイクロ滴定自動接触角計DSA30M/DSA100Mの画像

高温滴定自動接触角計 DSA30HD/DSA100HD

溶融樹脂など高温サンプルでの接触角測定に最大400度での高温液滴作成と、高温チャンバ内での接触角測定、表面張力測定を可能にしたモデルです。DSA100/DSA30に高温オプションを取り付けたモデルです。溶融樹脂など通常温度では固体である物質が高温で溶融したときの濡れの挙動を評価することができるシステムです。電熱ヒータを内蔵した高温滴定装置と同じく電熱ヒータを備えた高温チャンバの組み合わせを高機能接触角計DSA30ないしはDSA100に搭載することでサンプルの溶融と高温条件下測定を可能にします。なお、油など常温で液体のサンプルの高温条件下での測定は高温チャンバのみでも測定可能です。
高温滴定自動接触角計DSA30HD/DSA100HDの画像

高温高圧接触角計・表面張力計 DSA100HP

DSA100HPシリーズは高圧環境を作り出す圧力セルとKRUSSのハイエンド自動接触角計DSA100Bを組み合わせたシステムで、最大200度での高温液滴作成と高温チャンバ内での接触角測定を可能にしたモデルです。圧力セルは複数の種類があり、必要圧力に応じて選択することが可能です。また、塩水中の油滴の接触角測定のご要望の増加により、塩水でも腐食しないハステロイ素材のセルもご用意しました。
高温高圧接触角計・表面張力計DSA100HPの画像

粉体接触角計・動的接触角計 K100

表面張力計K100シリーズに接触角オプションを組み込んだモデルです。粉体や繊維の接触角を測定することができ、サンプルに応じて天秤分解能が異なる3つのモデルから最適なものを選択できます。K100シリーズは、接触角計の世界的リーディングカンパニーであるKRUSS社が誇る、粉体や繊維の接触角測定機です。K100は表面・界面張力の測定に使用されることが多い表面張力計で、接触角測定のソフトウェアモジュールを組み込むことでWashburn(ウォッシュバーン)法による粉体の接触角と、Wilhelmy(ウィルヘルミー)法による繊維の動的接触角の測定が可能になります。複数の試薬で接触角測定を行えば、表面自由エネルギーの評価を行うこともできます。
粉体接触角計・動的接触角計K100の画像

シングルファイバー接触角計/高感度表面張力計 K100SF

K100SFは今までにない0.1μgの荷重解像度を持つ超高感度天秤を搭載し、数μm径の単繊維の濡れ性の評価を可能にしました。また測定子の揺れを抑える天秤の自動ロック・解除機構とあわせて世界最高レベルの精度を誇ります。複数の試薬で接触角を測定すれば、表面自由エネルギーを求めることも可能です。
シングルファイバー接触角計/高感度表面張力計K100SFの画像

全自動フラットパネル接触角計 LSA

ハンディ接触角計MSAと高性能ロボットシステムを組み合わせた広範囲全自動多点測定型の接触角測定システムです。ソフトウェア内のマッピング解析画面にて設定した測定座標にアームを移動させ、MSAを降下させて測定を行います。MSAがダブル滴定システムを搭載している場合は水とジヨードメタン両方の接触角を測定することができるため、表面自由エネルギも瞬時に算出されます。シングル滴定システムを搭載している場合は上記以外の溶液を使用して測定することが可能です。
全自動フラットパネル接触角計LSAの画像

トップビュー式接触角計 TVA100

凹面の底の濡れを測定するなど液滴を横から見ることができない形状のサンプルでの接触角測定に対応した上面観察型の接触角計です。通常の液滴を横から捉えるタイプの接触角計とは異なり、液滴を上部から捉えますので凹面内や不均一な面上での接触角測定を可能にします。トップビュー式の専用モデルとして、あるいは、ひとつのモジュールとしてKRÜSSのスタンダードな接触角計に組み込むことが可能です
トップビュー式接触角計TVA100の画像

まとめ

このページでは、接触角計の基本原理、アプリケーション、種類についてご紹介しました。接触角計は表面科学と材料研究の世界で欠かせないツールであり、その重要性はますます高まっています。

接触角計を活用することで、新たな材料の開発、製品の品質向上、生産プロセスの最適化など、さまざまな分野で効果的なソリューションが得られます。デスクトップ型やハンディ型、さまざまな測定原理に基づく接触角計が用意されており、サンプルや測定の目的に合わせて選択できます。

接触角計の選び方についてより詳細な情報についは、接触角計の選び方のページをご覧ください。

関連情報