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接着とは何か?

接着とは何か?

「接着」とは異なる物質(異種材料)同士が接触し、分子間力や静電気力、機械的結合(アンカー効果等)、共有結合などを介して、互いに結合する現象のことです。「接着」という言葉を聞くと、接着剤が真っ先に思い浮かぶかと思いますが、接着剤に限らず、塗料やコーティング液の塗布、固体表面への汚れの付着、樹脂接着加工などの現象も2つの異なる物質の界面(液体-固体、固体-固体)をくっつけるという広義の意味で捉えれば、接着現象に該当します。その為、このような広義の意味で接着現象を捉えれば、日常用途から工業用途に至るまで様々な用途で「接着」という現象が利用されていることが分かります。「接着」は上記の通り、様々な因子が複合的に作用する現象ですが、ここでは主に分子間力に由来する「接着仕事」・「界面張力」・「拡張係数」という接着性を評価するためのパラメーターについてご紹介します。これらのパラメーターは、接着の強度や耐久性、信頼性を左右する因子となり、接着剤や素材の選定、接着性能の最適化などにおいて重要な指標となり得ます。そのため、これらのパラメーターを評価・分析することは接着性能を向上させる上で、非常に重要となります。

接着仕事・界面張力・拡張係数とは?

接着仕事(Work of Adhesion)

ある界面張力(界面自由エネルギー)σ12 [mN/m = mJ/m2]を持つ物質12を、表面張力(表面自由エネルギー)σ1[mN/m]を持つ物質1と表面張力(表面自由エネルギー)σ2[mN/m] を持つ物質2に、WA[mN/m]の力(エネルギー)を加えることで引き剝がしたとします。この時に加えた力が接着仕事WA[mN/m]として定義されます。簡単に言えば、接着仕事WAとは接着した界面を引き剥がすのに必要な力のことです。そのため、この力(エネルギー)が大きければ大きいほど、接着を剥がすのに必要な力が大きい=接着強度が高いということになります。また、物質を引き剥がす前後でのエネルギーは等価であるので、以下の式が成り立ちます。

界面張力(Interfacial Tension)

界面張力(界面自由エネルギー)とは2つの異なる(お互いに混ざり合わない)物質の界面に働く力(エネルギー)のことです。界面張力というと、エマルションの評価などに代表される、水-油のように混ざり合わない液体同士の界面に働く力を想像される方が多いかもしれませんが、液-液だけでなく、Youngの式で記述される通り、液-固の界面にも同様に界面張力は働きます。

接着評価において、界面張力は界面の長期的な安定性を示すパラメーターとなります。界面張力(界面自由エネルギー)が小さければ小さいほど、その界面はエネルギー的に安定となり、その界面を維持しやすくなります。つまり、界面張力が小さいほど、接着界面が自発的に剝がれにくくなります。ポスターを壁に両面テープで貼り付けた時に、数日経ってもポスターが付いたままか、あるいは数日経つとポスターが自発的に剥がれ落ちるのか(外部からの力は加えずに)、このような現象にも界面張力が影響している可能性があります。

界面張力σ_12は、物質1の表面張力の分散成分をσ_1^d[mN/m]、極性成分をσ_1^p[mN/m]とし、同様に物質2の表面張力の分散成分σ_2^d[mN/m]、極性成分をσ_2^p[mN/m]とすると、以下のように表されます。

拡張係数(Spreading coefficient)

液体(表面張力σ_2)が固体(表面自由エネルギーσ_1)を濡れ広がる際に、液体が完全に濡れ広がるのか(接触角=0°)あるいは完全には濡れ広がらずに液滴を形成するのか(接触角>0°)は、下記で定義される拡張係数Sにより判断できます。

拡張係数Sは上記のYoungの式で定義される、液滴端の力の関係を表しており、S>0であれば、液滴を濡れ広げる方向の力(表面自由エネルギーσ_1)が液滴を維持しようとする力の和(表面張力σ_2と界面張力σ_12の和)よりも大きいことになり、液体が完全に濡れ広がります。逆にS<0であれば、液体は完全には濡れ広がらず接触角>0°となります。

接触角・表面自由エネルギーとの違いは?

「接触角」や「表面自由エネルギー」は上記で紹介したパラメーターと比較すると、より一般的に接着性評価で使用されるパラメーターであると思います。どちらも接触角計を利用して、より簡単に評価ができ、また例えば、「接着剤が基材に対して濡れ広がるので接着性良好」、「基材表面の極性が高くなったので接着性良好」というように直感的にもより理解しやすいパラメーターです。一方で、これらの評価では実際の接着現象との相関が見られないあるいは評価ができない(接着の長期安定性等)ケースがあることも事実です。そのように、「接触角」・「表面自由エネルギー」だけでは、十分な評価ができないケースにおいて、「接着仕事」などのパラメーターを導入することで、接着現象をより深く、詳細に評価・理解することができるようになります。

KRUSS社の接触角計を利用した接着解析

これらの「接着仕事」「界面張力」「拡張係数」のパラメーターはいずれもKRUSS社の接触角計を利用して評価ができます。専用ソフトウェア「ADVANCE」は誰でも直感的に操作ができ、測定した値だけでなく、手入力の値での評価も可能です。また、評価データを蓄積することで、例えば各基材と各接着剤との相性予測(シミュレーション)が可能となり、実際の接着評価にかかる時間を節約できます。

接触角計を利用した評価結果から、「接着仕事」「界面張力」「拡張係数」などの各種パラメーターの解析が可能になります。

<接着解析パラメーター>

影響
接着仕事 WA 接着強度
界面張力 σsl 界面の長期安定性
拡張係数 S 濡れの状態
接触角 θ 理論接触角

関連情報

接触角とは?

表面自由エネルギーとは?

関連装置

ダブル滴定ハンディ接触角計・表面自由エネルギー解析装置 MSA

MSAは2種類の試薬の接触角を同時に滴定・測定可能なダブル滴定システムを備える革新的なハンディ接触角計です。これにより、これまで試薬の入れ替えや計算などで手間のかかっていた表面自由エネルギーの測定を、誰でもワンクリックのわずか1秒で行うことが可能です。また、誰もがワンクリックするだけの全自動で簡単・スピーディな測定が可能。高撥水表面であっても少ない液量のまま容易に着液(例えば0.5μlや2.0μlなど)が可能。従来ニードル式で問題となる着液時のニードル高さ位置による接触角値への影響を低減。固体ニードル不使用なのでサンプルを傷つける心配がないという特徴をそなえます。
ダブル滴定ハンディ接触角計・表面自由エネルギー解析装置 MSAの画像

ハンディ接触角計 MSA Flex

MSA Flexは接触角測定機能をハンディタイプに落とし込んだシンプルでコンパクトな装置です。サンプル溶液や試薬などお好みの液体をカートリッジにセットして、接触角や表面自由エネルギーを測定することができます。液滴の作成、着液、データ取得はワンクリックの全自動で行われます。また、捜査はUSBケーブル接続されたPCから行いますが、専用ソフトウェアADVANCEは快適な測定を強力にサポートします。
ハンディ接触角計 MSA Flexの画像

簡易接触角計 DSA25

シンプルなハードウェアで高機能接触角測定を実現する簡易接触角計です。人間工学に基づく操作性抜群の日本語対応ソフトウェア「ADVANCE」との組み合わせにより、手動機ながら思いのままの接触角測定が可能です。着液動作が手動ながら、再現性良く着液可能な独自機構「ドーズ&プッシュ着液システム」を採用した、高い人気を誇る接触角計です。自動液滴作成、手動着液、自動測定による測定システムは使い勝手が良く、一部手動ながらスピーディー・快適・高精度な解析が可能です。
簡易接触角計DSA25の画像

高機能自動接触角計 DSA30

KRUSSのハイエンド全自動モデルDSA100の機能はそのままに、コンパクト化、低価格化を果たしたモデルです。液滴の作成、着液、測定をすべて自動で行うため、人為誤差を最大限に排除した測定をご希望の場合に最適です。マルチシリンジシステムを使用すれば最大4種類の試薬を自動で切り替えながら測定できます。自動軸移動オプションの選択により、XY(θ)軸を自動移動させながら固体上の任意の個所の接触角をワンクリックの全自動で測定することができます。マッピング解析にも対応しており、固体上の濡れ性の分布を可視化することも可能です。

高機能自動接触角計DSA30の画像

ハイエンド自動接触角計 DSA100

接触角計の世界的リーディングカンパニーであるKRUSS社のラインアップの中で、最もハイエンドなモデルです。簡易接触角計DSA25やコンパクトな全自動接触角計DSA30が対応するほぼすべての機能とオプション、A4サイズを上回るような大判サンプルの測定、高圧環境での測定など、ありとあらゆるニーズに応えられる拡張性の高さを備えます。カメラ倍率は無段階7倍ズームと小さな液滴でも常に最適な倍率で高精度に測定することができます。滴定や着液などの各種動作の手動化・自動化はもちろん、最大8種類の試薬切り替えが可能なマルチシリンジ、最大測定可能サンプルサイズW700 x D∞ x H275mmを誇るモデルDSA100Lなど、特殊なサンプルを測定できる各種オプションやモデルを取り揃えています。
ハイエンド自動接触角計DSA100の画像

多機能自動表面張力計 Tensiio

KRUSS社が開発した次世代の多機能表面張力計です。本体上のカラータッチディスプレイによる軽快な操作性と省スペース化に加え、プレート法やリング法などの基本的な表面/界面張力測定はもちろん、固体サンプルの動的接触角測定、粉体の接触角や表面自由エネルギー、浸透重量速度測定、CMC(臨界ミセル濃度)測定、液体密度測定など幅広い評価に対応可能なモデルです。