【事例】工業用槽および電気分解プロセスの界面活性剤濃度モニタリング
洗浄槽 – 電気めっき槽 – エッチング槽 – 電解金属精製
界面活性剤は工業用槽内で重要な役割を果たしています。例えば、洗浄槽ではワークの汚れを落とす洗浄剤として、またエッチング槽や電気めっき槽では湿潤剤として作用し、ワークピース全体を均一に濡らす役割があります。電気めっきや銅などの金属の電解抽出および精錬のようにガスが放出されると、界面活性剤は上昇するガスの泡のサイズを小さくしたり、槽表面に小さな泡や界面活性剤自身の層を形成することによって、有毒または腐食性のミストの発生を防ぎます。これらすべてのプロセスが最適に実行されるには、界面活性剤の濃度を定期的にモニタリングする必要があります。
ハンディ動的表面張力計による槽内の界面活性剤濃度のモニタリング
界面活性剤の濃度が臨界値を下回った場合に、迅速に対応する為に、定期的な槽内の界面活性剤濃度のモニタリングは重要です。そうしない場合、製品の品質問題やそれに付随してプラントを長時間停止することに繋がる可能性があります。
ハンディ動的表面張力計はモニタリングに最適であり、槽内で直接、あるいは素早くサンプルを採取した後に現場にて、界面活性剤濃度を測定できます。これは、動的表面張力計を使用して表面張力を測定することにより行われます。
表面張力に基づく界面活性剤濃度の測定
界面活性剤濃度は表面張力に依存します。槽内の界面活性剤の効果(洗浄効果や湿潤効果など)も表面張力の変化に直接的または間接的に関係している為、その測定値はプロセスにおける重要な指標となります。しかし、界面活性剤は臨界ミセル濃度 (CMC)未満でのみ表面張力を低下させ、この濃度を超えると、表面は界面活性剤分子で飽和し、溶液中にミセルと呼ばれる分子集合体が形成されます。その後、界面活性剤をどれだけ加えても表面張力は一定のままであり、もはや濃度管理に適切な指標ではありません。同時に、工業用槽内の界面活性剤濃度は、多くの場合 CMC を上回っています。
図1:界面活性剤濃度と表面張力の関係。CMCを超えると表面張力は一定になります。
動的表面張力の測定
バブルプレッシャー法による動的表面張力の測定は、界面活性剤の飽和がまだ起こっていない、新たに形成された表面の表面張力(動的表面張力)を測定する為、動的表面張力はCMCを超えても、溶液内の界面活性剤濃度に大きく依存します。その為、動的表面張力を測定することにより、界面活性剤濃度のモニタリングが可能となります。
バブルプレッシャー方法は、溶液中のキャピラリの先に生成された気泡の内圧を測定することにより、表面張力(動的表面張力)を算出します。また、気泡の生成速度を制御することにより、ミリ秒単位からの非常に広範囲の表面寿命(界面形成時間)における、表面張力(動的表面張力)の測定が可能です。
検量線の作成による界面活性剤濃度の測定
バブルプレッシャー法の動的表面張力による界面活性剤濃度の測定を行う場合、まずは実験室で対象の界面活性剤の検量線を作成します。各濃度の界面活性剤の動的表面張力を測定することにより得られた曲線から、界面活性剤濃度と動的表面張力が最も強く依存する表面寿命(界面形成時間)が決定されます。
図2:異なる界面活性濃度における動的表面張力。界面活性剤濃度と動的表面張力が最も強く依存する(表面張力の差が大きくなる)表面寿命を決定します。
この表面寿命は装置で自動的に決定され、界面活性剤濃度の管理に使用されます。
このようにして作成された検量線から、未知の界面活性剤濃度の溶液の動的表面張力を測定することにより、その界面活性剤濃度を特定することが可能になります。
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