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高正確性、高分解能な粒子径測定法

高正確性、高分解能な粒子径測定法

ほとんどの粒子径測定機は、得られた生データに近い理論曲線を抽出し粒子径に算出するフィッティング法を採用しています。この方法はサンプル全体の中心粒子径や分布情報は簡便に得やすいですが、多分散系(分布が広い、径の異なる粒子が存在する)の場合は、正確性や、分解能が低い場合があります。このような多分散系や粗大粒子の高感度検出を達成するためには、遠心法、電気検知帯法、動的画像解析法が有利です。本内容ではこれらの測定法について紹介いたします。

高分解能な測定とは

高正確性1粒子径差を細かく検知できることで、ある測定法では1つのピークとして得られていても高分解能測定では複数ピーク得られるというものです。分散性評価を詳細に評価したい方に特に有効です。ニーズとしては、例えば、、、どうも所有の装置では差が見られない、SEMでありそうな分布の違いを定量したい、わずかな凝集粒子を検知したい、複数の粒子径を意図的に入れている等が挙げられます。試料は適性濃度に調整します。高分解能な測定では希釈された液中のわずかな凝集粒子も見逃しません。

高分解能な測定では以下のような凝集粒子を感度良く検知できる測定が可能です。このような粒子径測定結果を求める方は高分解能な測定法をお試しください。(例:弊社取扱CPS Instruments社製ディスク遠心式Disc Centrifugeの結果)。

高正確性図2

沈降法

1.原理

古くからある原理ですが、その正確性の高さ、高分解能な特徴で、ナノ粒子測定で再認識されている原理です。粒子径範囲は数10nm~10μm程度です。初期はアンドレアゼンピペットを用いて自然沈降で測定していました。近年は遠心場に分散液を置き測定します。液中の粒子がある距離を沈降する時間を測定し沈降(浮上)時間を求めます。このとき、粒子径Dと沈降速度Vの関係式には下記のストークスの式が成り立ちます。

高正確性式1

ρp 粒子密度ρs 溶媒密度、G遠心加速度、η粘度

この式から求めた粒子径は、ストークス径と定義されます。形はどうであれ、その粒子の沈降の速さから球換算した粒子径です。沈降した粒子の検出は光またはX線源です。粒子径が沈降速度の2乗に比例するという簡単な式でフェィッティング法ではなく分解能の高い測定が可能です。必要な物性値は、粒子と溶媒の屈折率と密度、溶媒粘度です。検出器まで粒子を移動させるため測定時間がかかりますが、近年は技術向上で遠心力が強くなり測定時間は短くなっています。粒子が小さく、密度が低いほど測定時間は長くなります。

2.沈降法の種類

沈降法には、積算沈降法と頻度別沈降法の二種類がよく知られています。積算沈降法は最も古い沈降法です。均一に分散した試料の液面から既知の距離に配置された検出器で粒子濃度を測定します。検出器に達する光は初期強度が最小であり、粒子が沈降するにつれ粒子濃度は低下し、検出器に達する光強度は増加します。ある特定の粒子径よりも小さい全ての粒子の総数(積算)が測定中に連続的に測定され、粒子径の積算分布が得られます。

高正確性図4

頻度別沈降法では、透明な溶液の表面に粒子試料を積層させ一斉に沈降させます。積算沈降法と同様に粒子はストークスの法則に従って沈降します。検出器の信号強度は始めに最大になり、粒子が検出器のビームに到達すると信号強度は減少します。すべての粒子が検出器を通過すると、信号強度は元のレベルに回復します。粒子の密度が均一であれば、検出器を通過する粒子は常に同じ粒子径になります。そのため、ある粒子径に対する粒子濃度を常に観察しており、粒子径の頻度分布を直接得ることができます。このように粒子径に対して数学的積分処理を適用して頻度分布を得る積算沈降法よりも、分布の中のほんの一部の粒子(頻度)だけいつも検出器で測定する頻度別沈降法が分解能の非常に高い頻度分布を得ることができます。

3.測定例

粒子径の異なる7種類の単分散ポリスチレンラテックスを混合し、頻度別沈降法とレーザー回折・散乱法で粒子径分布を比較しました。頻度別沈降法では7つのシャープなピークとしてそれぞれの径ごとに別々のピークとして検出されたのに対し、レーザー回折・散乱法では7種混合系にもかかわらず、ブロードなひとつのピークとして検出されました。頻度別沈降法は非常に分解能が高いことがわかります。

高正確性図5

弊社装置では頻度別沈降法を用いたディスク遠心式の製品がございます。

→CPS Instruments社Disc Centrifugeの製品情報はこちら

 

電気検知帯法

1.原理

高正確性図6こちらも古くからあるコールターカウンターで知られる方法です。一般的にμオーダーが測定範囲です。電解液に粒子を分散させます。細いアパチャーと呼ばれる穴を粒子が通過した際に、電解液と粒子が置き換わることで抵抗が変わることを電気的に検知します。電気信号は電解液が置き換わった体積分の信号であり、その体積に相当する球に換算した直径を粒子径とします。そのため定義径は、体積相当径になります。1つ1つ粒子を検知するカウンター法であるので、高分解能で、さらに個数濃度測定も可能です。測定に際し、物性値は必要ありません。

粒子が通る穴が大きいとノイズも大きくなるので、一度に測れる粒子径範囲(ダイナミックレンジ)は、粒子径分布測定機としては広くありません。電解液を用いるため基本的に水系限定となります。

2.測定例

以下はポリスチレンラテックス4種混合サンプルです。図の縦軸は個数粒子濃度 p/mL/nm、 横軸は粒子径です。4粒子それぞれを検知し分解能な測定ができることがわかります。各濃度も妥当に計測されております(nCS1で測定)。

高正確性図7

弊社では最新のマイクロ流体技術を用いたMFPS法の電気検知帯法を扱っており、たった3μLで50nmから測定できる装置がございます。

→Spectradyne社nCS1の製品情報はこちら

 

動的画像解析法

原理

CCDカメラで動いてる懸濁液中の粒子を1つ1つ画像を取得し、ソフトウエアで解析する方法です。近年のパソコンの性能向上で開発が盛んです。主にμm以上が対象で、湿式または乾式で測定できます。個数測定で、高分解能、形状評価が可能です。

→詳細は動的画像式のページを参照ください