粉体の濡れとは?
・粉体の濡れ(親和性)とは?
濡れ(Wetting)は、個体表面に接触している気体が液体に置き換えられる現象を言います。平らな個体表面の場合にはそこに一滴の液体を滴下して液体の形を見て濡れやすさをおおよそ知ることができます。粉体も同様に、下図のように、粉体の表面処理違いによって濡れ性が大きく異なる場合に、粉体の上に液滴を滴下して液体が濡れるかどうかの確認を通して濡れ可否の判断は可能です。また、液体の中に粉体を投入して、よく馴染んでいく場合に、その液体に対して濡れ性が良いと言えます。
図1は液体に粉体を投入したのではなく、約500nm酸化アルミニウム粒子アルキルシラン処理前後の粉体に水を1滴滴下した写真です。
表面処理前 表面処理後
図1: 酸化アルミニウム粒子の表面処理(アルキルシラン剤処理)前後
・粉体濡れ性の影響因子
粉体の濡れは物理的には粉体の大きさ、表面の粗さ、そして粉体の中に存在する気孔やその大きさが影響します。また、上記のように同じ粉体でも表面処理によって濡れ性がことなることから、粉体の表面化学特性(疎水瀬・親水性)が大きく影響を与えます。もし、水には濡れないけれども、水に界面活性剤を入れるとどのようになるのでしょう。溶媒の種類を変えたらどのようになるのでしょう。その濡れ性は大きく変化します。ですから、粉体の濡れを考慮する時には、粉体だけではなく、分散媒やその中に入っている添加剤も一緒に考慮しなければなりません。
・粉体濡れ性の評価装置
固体表面の濡れ性の場合、水を滴下して固体表面と水の接触角を測定して、Young式を用いて、固体表面の濡れ性を数値化可能です。
固体が粉体や微粒子の場合、接触角測定は容易ではありません。この場合、粉体の気孔へ液体の浸透速度に着目したWashburn式を考慮して粉体や微粒子の分散媒への濡れ性を評価することが可能です。
近年パルスNMRによる濡れ性評価も注目されています。例えば、水に粉体を入れると、粉体は水に濡れ、そして粉体表面に束縛されている水の量はその粉体の濡れ性(親和性)と関係します。パルスNMRにより水だけのプロトンの緩和時間と粉体を入れた後分散系全体の平均的なプロトンの緩和時間を測定することによって、粉体の表面に束縛されている水の量を把握し、粉体や微粒子の濡れ性を把握できます。溶媒としては水だけではなくプロトンがあればどんな溶媒でも使えるので、粉体に濡れ性の良い最適な溶媒探索にも使えます。