時間領域 核磁気共鳴装置 TD-NMR SpinMate
- 概要
- 特徴
- 仕様
- 導入事例事例
SpinMateは核磁気共鳴における共鳴の緩和時間を測定します。
SpinTrackをよりコンパクトに軽量化させ、常温領域での使用に特化した、コストパフォーマンスに優れたモデルです。
TD-NMR SpinMateは多岐にわたる分野で様々な測定・評価が可能です。
分散性評価(粒子分散溶液)
粒子分散溶液の比表面積、粒子界面状態(濡れ性)、分散凝集状態を評価することができます。
高濃度分散系でも希釈することなく測定ができるので、原液状態のまま評価可能です。
測定操作は簡単で、短時間で再現性良いデータが得られます。
粒子の濡れ性比較、比表面積の比較、分散凝集状態の確認、適切な分散処理時間の推定、粒子の分散媒(溶媒)との親和性の比較、分散剤のスクリーニング等に活用可能です。
原理
粒子表面に拘束されたプロトンの緩和時間は、溶媒中に自由に存在するプロトンに比べて短くなります。
これは粒子表面近傍の溶媒分子が拘束され、運動性が低くなる為です。このことから粒子表面積が大きいほど(≒粒子径が小さいほど)、粒子表面に拘束されるプロトンの総量が多くなり、系全体での緩和時間は短く得られます(下図左)。これは分散溶液の分散-凝集形態でも同じことが言えます。
また、同一径の粒子でも表面状態の違い(表面処理など)で濡れ性に差異があると、系全体での拘束されるプロトンの量は変化します。(下図右)
サンプル間を比較することで、粒子径の違い、表面の濡れ性の違いを評価することができます。
分散評価のより詳しい原理、測定例は「TD-NMRによる濡れ性・分散性評価」をご覧ください。
比表面積の評価
同一濃度の比表面積の異なるシリカ粒子を分散させた水溶液を評価した事例を示し、説明致します。
3種類のシリカ粒子を、それぞれ15wt%の濃度で分散させた水溶液の緩和時間測定を行った結果が以下の図になります。各サンプルの比表面積は凡例に記載がございます。
比表面積が大きい方が、緩和曲線の減衰が早いことが分かります。これを緩和時間が短いと表現します。界面状態が同じ粒子を同濃度で調整すると、その粒子の表面積(界面量)は比表面積が小さい粒子の方が大きくなります。
界面量が多いと溶液中で溶媒分子と相互作用する量は増えていきます。
粒子によって拘束された溶媒分子は緩和が早く、粒子によって拘束されていないバルク状態の溶媒分子は緩和が遅く得られます。
よって界面量多い方が粒子によって拘束される溶媒分子の数が多くなるので、緩和時間は短く得られます。
次に上記で用いたシリカ粒子を種々の濃度で緩和時間を測定した結果を以下に示します。
この結果からも見られる通り、濃度が高いことと比表面積が大きいことは、粒子界面によって拘束される液体分子の数が増える方向に寄与するので、緩和時間が短くなることが分かります。
この結果から、分散性(濡れ性)を表現する指数であるRsp値を算出した結果を以下に示します。
界面状態が同一で比表面積が異なる粒子間では、このグラフで得られた傾きによって比較評価可能になります。
[参考]
今回は界面状態が同一のサンプルでの比較になりましたが、
異種の粒子間であっても、横軸を界面量、縦軸をRsp値とすることでその傾きによって界面状態(界面当たりの濡れ性)を評価することが可能になります。
分子運動性評価(固体高分子材料)
樹脂、ゴムなどの固体高分子材料の分子運動性を非破壊で評価します。
架橋度合いの異なるサンプルや結晶性の異なるサンプルを測定することで、分子運動性の比較評価が可能です。
様々なアプリケーション
TD-NMRを用いた産業界のソリューション提供は様々な分野で多彩な可能性を持っております。
他にも、TD-NMRを用いた測定は様々なアプリケーションを網羅しております。
- 特徴
●幅広い応用性
観測核次第で応用が可能です。試験材料内に存在する原子核、分散媒に存在する原子核、吸着分子に存在する原子核など。
●良好な再現性
どなたでも再現性良く測定が行えます。
●簡便な操作性
シーケンスファイルを選択するだけの簡単な測定が行えます。解析も専用のソフト内で解析可能です。
●短時間での測定
数十秒と短時間測定。
●熟練者にも対応
自由にシーケンスを作成いただけます
●自由にカスタマイズ可能
希望の仕様にて作成いたします
- 仕様
測定項目 | 緩和時間(T1、T2) |
緩和時間測定 | ① 観測核:1H ※他にも2H、19F、23Na、27Al、31P選択可 |
② 共鳴周波数:約18MHz (1H核) | |
③ 測定時間:数十秒から数分(測定時間はサンプルの性状に依存) | |
④ 試料管:10mmΦ(5mmΦも選択可能) | |
サンプル | ① NMRチューブに分取可能である事 |
(微粒子分散系の場合) | ② 測定可能溶媒:水系、有機溶媒系可能(構造中に観測核が含まれる事) |
③ サンプル量:約1mL(より少量での測定も可能) | |
温調 | ① 室温+5℃ ~ 50℃ |
操作性 | ① 測定項目を選択するだけの簡単なソフトウェア |
② オートチューニング可能 | |
本体概要 | ① 本体寸法: W300×D180×H180mm |
② 本体重量: 約16.5kg | |
③ ケーブル: 2本(電源ケーブル&PC接続用ケーブル) | |
電源 | AC100V 50/60Hz 3A |
- 導入事例
アプリケーション事例A
分散性評価(比表面積差、粒子径差、濡れ性(粒子と溶媒の相性))
アプリケーション事例B
【アプリケーション2】 CNTの分散終点~粒子径分布測定との比較
【アプリケーション3】 酸化アルミニウム粉体の表面処理による濡れ性の違い
【アプリケーション4】 界面が異なる粒子の添加剤2種の吸着状態~分散剤のスクリーニング
【アプリケーション5】 医薬用有機化合物(API)のロット間差~継時による吸水特性の違い
6. 分散剤の最適量評価
7. 2種以上分散剤の吸脱着挙動評価
8. 分散安定性と濡れ性、ゼータ電位との関係