テーブルセル式 ナノ粒子径分布・分散評価装置 VASCO
- 概要
- 特徴
- 仕様
- 導入事例事例
フランス国立石油研究所(IFP)によって開発された革新的な技術(特許取得済)を用いたナノ粒子向けの粒子径分布測定装置です。測定は簡便な測定法として良く知られている動的光散乱方式で、セルの形状が特徴的です。
テーブルセルの採用により、多重散乱を防ぎ濃厚で不透明な黒色の分散液でも測定が可能です。15~70℃で温度調整可能です。
原理
動的光散乱方式(DLS)により0.5nm~数μmまでの粒子径分布を簡便に評価できます。(原理や特徴については動的光散乱DLSの学ぶ知るをご参考下さい。)
動的光散乱式の特徴
DLSでは可視光レーザーを薄い懸濁液で照射し後方散乱光をある時間間隔で検知します。そこから散乱光のゆらぎを測定します。ゆらぎを自己相関関数に解析し、ストークスアインシュタインの式を用いて理論式とのフィッティング法により粒子径分布を解析します。以下の特徴があります。
・ナノ粒子を高感度に測定
・定義径は流体力学径(電気二重層や吸着高分子を含んだ径)
・溶媒屈折率、溶媒粘度が必要
VASCOのテーブルセルの特徴
・光路長を100µmにする事で準濃厚試料、黒色試料の粒子径測定が可能。濃厚試料の分散評価に応用。
・光路長を2mmにする事で希薄試料の測定も可能
・消耗品不要
多重散乱
DLSは後方散乱光を測定します。粒子からの散乱は個々の粒子からの散乱光を測定することでその粒子径を解析することができます。しかしある濃度以上になると粒子個数が多いため1つの粒子からの散乱がさらに他の粒子でも散乱することが起きます(多重散乱)。複数の粒子で散乱が生じると散乱光の揺らぎが激しくなり解析で実際より小さく解析されます。これを防ぐため通常、測定の際は多重散乱が生じない希薄系で測定を行います。
解析とソフトウエア
粒子径解析
単分散解析では光散乱強度基準のZaverageと多分散指数PDIで解析します。
多分散解析では、独自の多分散に適した解析アルゴリズムで高感度評価が可能です。SBL解析、Pade-Lalaceパデラプラス解析(特異値分解法 Singular Value Decomposition)がございます。
下図、左下は自己相関関数で、緑Signalが測定から得られず自己相関関数、赤Fitが理論曲線です。Fitがどれだけ測定の曲線と合っているかをredisudesの欄で確認できます。一峰解析Cumulantsが妥当か、多分散解析SBLが妥当かを確認できるので、客観的によりよい解析結果を得られます。
ソフトウエア
ワンクリックでPDFレポートを作成できます。
溶媒データベースに200ケの溶媒データを保存されています。新規に登録も可能で簡便に管理が可能です。
予想粒子径や粘度情報から自己相関関数、相関時間の逆計算と表示ができ原理の理解、学習に役立ちます。
測定例
【eBook】インク顔料の粒子サイズ特性評価はこちら
・約100nmポリスチレンラテックス
0.1wt%と0.001wt%で測定した例です。青0.001wt%で115nmと妥当な結果が得られております。赤0.1wt%は希薄用セル高さ(without DTC)で測定した結果で85nmと小さく得られました。0.1wt%は濃度が濃く多重散乱(1つの散乱光が複数の粒子で散乱)のため粒子径が小さく得られている可能性があります。右は濃厚対応のDTCで測定結果で、希薄と同様の結果が得られており、濃いものも多重散乱を防いで測定できることが確認できました。
・インクジェットインク
インクジェットプリンター用の水系黒色顔料インクのメーカー違いを測定しました。サンプルは蒸留水で十分希釈したものを使用し、測定は1分と短時間でした。両者とも1oonm程度で得られ互換インクのほうが粒子径が小さいことを高感度に検知しました。下表は原液で測定した結果です。原液のままでも生データが得ることができ、キュムラント解析で希釈と同程度の粒子径が得られ、互換インクが小さく得られました。
・濃厚分散評価
テーブルセルにより通常の粒子径測定機では測れない準濃厚、濃色試料でも散乱光を検知可能です。濃厚試料では粒子間相互作用が生じる場合があるため、解析で粒子径や分散性の違いを比較評価しすることで分散評価へ応用できます。
紹介ビデオ
- 特徴
●希薄系、濃厚系の測定が可能(0.0001~40vol%)
●自動的にレポートを作成 データのまとめも簡単に
- 仕様
モデル名 | VASCO | |
測定項目 | ||
粒子径分布測定 | 測定範囲*1 | 0.5 nm~10μm |
検出器 | APD(アバランシュ・フォトダイオード) | |
測定温度*2 | 15~70℃ | |
レーザー光源 | 658nm、75mW | |
試料セル | テーブルセル | |
測定時間*3 | 30秒~5分(シングルモード測定時)、最大120分(マルチモード測定時) | |
解析アルゴリズム | Cumulants、Pade-Laplace、SBL | |
レーザー安全クラス | Class Ⅰ | |
サンプル | 試料濃度*4 | 0.0001~40vol% |
試料量 | 15~ 400µl (最低試料量はサンプルの性状に依存) | |
分散溶媒 | 水系および有機溶剤系 | |
操作性 | ウォームアップ時間 | 5分以内 |
設置環境温度 | 15~30℃ | |
データ処理装置、専用のソフトウェア | ||
テーブルセルの試料をふき取るだけの簡便な洗浄 | ||
装置本体寸法 | 概略:W800×D600程度の作業スペースで設置可能(本体、ノートPC) | |
本体寸法:W約330×D約280×H約300mm 重量:約12kg | ||
電源 | AC100V 50/60Hz 約:50W |
*1:測定粒子径:流体力学的粒子径 / 測定範囲はサンプルの性状に依存 *2:環境温度に依存 *3:サンプル性状や測定条件に依存 *4:粒子の物性や粒子間相互作用に依存
- 導入事例
アプリケーション
・黒色インクジェットインクを無希釈、希釈した結果の比較
・金属インクの原液測定
・ファインバブル(ナノバブル)の測定
・濃厚エマルションの測定
・ナノ粒子全般